自然と健康を科学する ツムラ
公開日:2026/05/14 最終更新日:2026/05/14

女性の健康に寄り添う“和漢×食養生”

食養生

女性の不調は、普段の食事から整えていくことが大事です。「薬膳」と聞くと、生薬や特別な食材を使った“難しい料理”というイメージがあります。ですが東洋医学の食養生は、日々の体調や季節・気候に合わせて、身近な食材でバランスを整えていく考え方です。女性はライフステージの変化が多いため、年齢に合わせた整え方も解説します。

「中庸」とは?体を整える食養生の基本

東洋医学における食養生とは、体調・体質に加え、天候や季節も踏まえて体を整える考え方です。体が整った状態を「中庸(ちゅうよう)」と呼びます。偏りのない、ちょうどよい状態のことです。

原則としては

余分は取り除く・不足は補う・冷えは温める・熱は冷やす

となります。

冷えていればネギたっぷりの鍋を食べる、血が足りなければレバーを食べるなど、スーパーなどで手軽に買える食材でも、体を整えることができます。食養生は、予防的なセルフケアとして取り入れやすいのが特徴です。

この身近な食材を使用した食養生について、もう少し詳しく解説していきます。

「薬食同源」:身近な食材でも薬膳はできる

東洋医学には「薬食同源(やくしょくどうげん)」という考え方があります。「薬食同源」とは、薬も食も同じ自然の産物で、歴史の中で「治療に用いるもの」を薬として分類してきたという考え方です。

漢方薬で用いられる生薬には、植物・動物・虫などを使います。生薬は、自然の中から薬になるものを分類したもの。薬は自然の一部であり、食べ物も自然から得られます。薬も食も、源は同じという考え方が「薬食同源」です。

さらに東洋医学では、薬のはたらきを捉える手がかりの一つとして、「五味(ごみ)」=五つの味 が重視されてきました。味は、単なる嗜好ではなく、体への作用を考えるための要素の一つだとされています。

そして食材にも同じように味があります。だからこそ東洋医学では、食材も生薬と同じ自然の産物として、それぞれに一定のはたらきがあると考えられてきました。温める・冷やすといった性質だけでなく、効能に関わる要素として「五味」でも分類されるのです。

「五味」とは「酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味(塩味)」のこと。味ごとに次のような異なる作用を持ちます。

・酸味は引き締める 
・苦味は熱を和らげる 
・甘味は元気を補う 
・辛味は発散させる
・鹹味はしこりを和らげる、便を出させる

このように、薬が「五味」などで捉えられるのと同様に、食材も味を持つことから、食もまた体に一定のはたらきをもつと考えられています。

だからこそ、食養生は特別な生薬がなくてもスーパーの身近な食材から始められます。薬は病気の治療に用いられますが、日々の小さな不調は、まず食で整えるという発想も、東洋医学の食養生の大切なポイントです。

「心身一如」とは?陰陽五行に基づく考え方

次に、体だけでなく「心」の健康についても触れておきます。東洋医学には、体と心は切り離せないという意味の「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方があります。

たとえば、睡眠不足が続くと気分が落ち込みやすくなったり、強いストレスが続くと胃腸の調子が乱れたりするように、私たちの心と体は常に連動しています。体が整えば心も整います。そのため食養生も、「体を整える」だけでなく、結果として「心の安定にもつながるセルフケア」として考えられます。

また、心身一如は陰陽五行の考え方とも関連します。陰陽五行では、体のはたらきを「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」という機能のまとまりで捉え、さらにそれぞれの五臓に、あらわれやすい感情があると考えます。つまり、“感情(心)”も五臓(体)のはたらきの一部として扱うのが、陰陽五行であり、心身一如につながるポイントです。

■ 陰陽五行とは。「怒・喜・思(悩)・悲・恐」と五臓の関係とは?

陰陽五行とは、すべてのものは陰と陽、そして五行で分類できるという考え方です。
陰陽五行では、体を五臓という機能に五分します。「肝・心・脾・肺・腎」です。そして、五臓には、それぞれつながっている感情があると考えます。

体と心はつながっているため、食で五臓のバランスを整え、「中庸」に持っていくことが大事です。中庸に整えるには、この後ご説明する「気・血・水(き・けつ・すい)」のバランスも重要になってきます。

■ 気・血・水とは?食べ物からできる栄養物質

漢方での体の捉え方には「気・血・水」があります。気血水とは何なのでしょうか?

・気:体を温め動かすエネルギー、免疫にも関係
・血:血液と血液が含む栄養・ホルモン
・水:汗・唾液・鼻水など、血液以外の体液すべて

気血水は、いずれも食べ物から作られる栄養物質です。食が気血水に関わるということは、食は体のバランスをとることに大きく関わるということですね。例えば、血が足りないときはレバーなどの血を支える食材、水が過剰でむくんでいるときにはコーヒーなど水を出す食材が役立ちます。食養生は体のために重要な、薬のみに頼らないケアなのです。

女性は「7の倍数」で節目を迎える

東洋医学の古典では、女性は7の倍数の年齢でホルモンバランスが変わり、体調に変化が訪れると考えます。

14歳で初潮 → 21歳で女性としての体が完成 → 28歳が出産する上でのピーク → 35歳で疲れやすくなる → 42歳でさらに調子が下がる → 49歳で閉経

21~28歳頃は女性ホルモンの状態が比較的安定しやすい時期とされます。一方で35歳以降は、仕事や生活の忙しさも重なり、疲れやすさなど年齢による変化を実感しやすくなる人も多いでしょう。

ちなみに、男性は8の倍数の年齢で体調に変化があり、40歳以降疲れやすくなり、48歳でさらに調子が下がります。
女性は月経など毎月の変化もあり、ライフステージの節目も多いことから、日頃からのケアが大切だといえます。

月経は五臓の「肝」、更年期や加齢に伴う変化は五臓の「腎」が関わると東洋医学では考えられています。そのため、肝・腎を意識したケアが大切になります。さらに、栄養の消化吸収を担うのは胃腸でもあるため、胃腸をいたわることも欠かせません。
では、年代別の食養生はどのように考えるとよいのでしょうか。

■20~30代:血を補い、巡らせる

20~30代は月経や忙しさで血を消耗しやすい時期です。そのため、血を補う/巡らせる食材を意識するとよいでしょう。
血を補う:赤身肉・ほうれん草・ひじき・クコの実・ベリー類など
血を巡らせる:タマネギ・黒キクラゲなど

■30~40代:腎のケアも意識する

30~40代は、疲れやすさを感じ、不調が出やすくなる人もいます。
20代までのケアに加えて、「腎」をいたわる食材も取り入れていきましょう。
腎を補う:黒豆・黒ごま・黒米・昆布・山芋など

■50代以降:消化にやさしく、うるおいも補う

50代以降は更年期を迎え、乾燥しやすくなったり、消化機能が低下しやすくなります。40代までのケアに加えて、
消化にやさしい食事を心がけ、うるおいを補う食材も意識しましょう。
うるおす:白キクラゲなど
また、50代以降は食材選びだけでなく、量や温度、調理法といった「食べ方」をより重視することがポイントになります。

食材より“食べ方”で差がつく

食養生では、「何を食べるか」と同じくらい「食べ方」を重視します。体質に合わない“健康習慣”は逆効果になることも。例えば、冷えやすい人が冷たいスムージーを習慣化にすると、体を冷やしやすくなる可能性があります。また、健康にいいからと同じ食材を大量にとるのもNGです。過ぎた摂取はバランスを崩す原因にもなり得ます。

おすすめの食べ方は、おかゆ/スープ/蒸し料理 など温かくて消化にやさしい調理法。味付けは濃くしすぎず、薄味を基本にするとよいでしょう。これらは手軽にできる調理法でもあります。

まとめ

食養生は病気になる手前の段階で取り入れやすい、予防的なセルフケアの一つです。変化が多く不調を感じやすい女性こそ、日々の食養生は大切。無理せず我慢しすぎず、体のサインに目を向けながら、バランスのよい食事を心がけましょう。

谷口ももよ(たにぐちももよ)

薬膳料理研究家、国際中医師/国際薬膳調理師、一般社団法人東洋美食薬膳協会代表

広告代理店での不規則な生活を送っていく中で、結婚・出産を経て、自身や家族への健康への意識が高まり、料理研究家へ転身。食材の特徴をイチから学び、健康的な食事・レシピをさまざま開発。テレビや雑誌での出演だけでなく、セミナーや大学での講義、本の出版などを通じて、食文化の大切さを伝える活動を行っている。