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公開日:2025/12/05 最終更新日:2025/12/05

「冷え」を感じるなら、タイプを知って効果的なケアを!

冷え

「手足がいつも冷たい」「とにかく足だけ冷える」「暖房をつけているのに体が温まらない」「手足は温かいのに、お腹の中が冷たい」……そうした「冷え」にまつわる悩みを抱えていませんか?女性にとって「冷え」は身近な問題であるにも関わらず、きちんと詳しく理解できている人は少ないようです。
いったん整理しておくと、「冷え」とは「体の一部または全体に冷たさや寒さを感じる症状」のことです。また、「冷え症」とは「とくに病気があるわけではないのに、冷えが原因で肩こり、腹痛、むくみといったさまざまな不調が現れ、日常生活に支障が出ている状態」を指すと考えてください。
今回はそんな「冷え」と、ケアの方法について、和漢の観点から紐解いていきます。

「冷え」をきちんと理解するために、和漢の知恵で分析!

漢方医学では、「冷え」は単なる不快な症状ではなく、「体のバランスが崩れているサイン」だと考えます。冷えを感じるということは、体の熱を作る力(エネルギー)が不足していたり、熱がうまく全身に行き渡っていなかったりする可能性があるのです。

単に「冷たい」と感じるだけなら大きな問題ではありませんが、肩こり、疲れやすさ、便秘、月経痛など、いろいろな不調を引き起こすケースもあるのが「冷え」の厄介なところ。漢方医学では、そうした不調が日常生活に悪影響を与えている状態を「冷え症」と捉え、古くから重要な問題として向き合ってきたのです。

その一方、西洋医学では「冷え」に対するアプローチがあまり進んでこなかったという歴史があります。日本で意識されるようになった歴史も意外と浅く、「冷え性」という日本独自の言葉が初めて登場したのは1908年(明治41年)に徳田秋声が書いた『新世帯』という小説です。また、「冷え症」という言葉が最初に登場したのは1969年(昭和44年)に刊行された『漢方診療医典』だと言われています。

あなたの冷え症はどれ?タイプを見極めて適切なケアを

一口に「冷え」と言っても、状態は人それぞれ異なります。「冷え」を重要な問題として捉えてきた和漢の世界では、その症状が現れる部位によって分類。「全身型」「下半身型」「内臓型」「四肢末端型」の4つに分けて考えます。タイプによって原因が異なることがあり、それに伴って対処法も変わるため、どのタイプなのかを見極めてケアをすることが大切なのです。

「全身型」の冷えは、エネルギー不足で体全体がひんやり

全身型の冷えはその名の通り、体全体が冷えてしまうタイプです。このタイプの根底には多くの場合、「気力や元気の低下」があります。「気力」にも「元気」にも使われている「気」とは、和漢の世界において「体を動かしたり温めたりするエネルギー」のことです。また、この「気」が不足した状態を「気虚(ききょ)」と呼びます。気を消耗したり気が弱くなっている際は、主に下記の原因が考えられます。

さらに「陽虚」の状態では、体の水分代謝が悪くなり、「水滞(すいたい)」と呼ばれる状態を伴いやすくなります。むくみやすかったり、下痢をしやすかったり、痰(たん)がからみやすかったりするのも特徴的。熱が足りなくなって水分がうまく流れず、滞ってしまうイメージです。
ケアの方法としては、胃腸の働きを整え、体を内側から温めることが大切。基礎体力を高めたり、余分な水分を外に出したりするように意識するのもおすすめです。

「下半身型」の冷えは、足が冷たいのに顔はほてりやすい

顔や上半身はほてっているのに、足や下半身に冷えを感じるなら、「下半身型」の冷えかもしれません。主な特徴は下記になります。

「下半身型」の冷えは、気の巡りが滞っているのが原因の1つと考えられます。和漢の世界では、体を巡るエネルギーである「気」は上から下へ流れていると考えますが、ストレスや疲労などで気の流れが滞ったり逆流したりすると、熱が上半身にこもってのぼせてしまうのです。それと同時に、下半身には熱が行き渡らず、冷えてしまうことになります。
また、このタイプは骨盤周りの血行が悪くなる「おけつ」の状態が関係していることが多いのも特徴です。「おけつ」とは、「血液の流れが滞り、ドロドロになった状態」のこと。月経痛がひどかったり、レバーのような塊が出たり、シミやくすみが気になったりする場合は、「おけつ」のサインかもしれないので注意しましょう。

ケアの方法としては、滞ってしまっている血の巡りを良くすることが先決。便通を促して、便とともに溜まったものを排出するのも改善につながります。

「内臓型」の冷えは、お腹などの中心部がひんやり

お腹の周りが冷えがちなら、「内臓型」の冷えで間違いないでしょう。下記の特徴に当てはまるかどうか、チェックしてみてください。

内臓型の冷えからは、胃腸を始めとする内臓の機能低下が推測できます。また、冷たいものの食べすぎ、暴飲暴食、ストレスなどが原因となっているケースもあります。
冷えてしまっているお腹を内側から温め、胃腸の働きを活発にできれば、自ずと改善しやすくなります。自分に合ったケアの方法を見つけてみましょう。

「四肢末端型」の冷えは、手先と足先だけが冷たい

手足だけが冷たいと感じる女性も少なくないようです。その場合は、「四肢末端型」という冷えのタイプになります。特徴は下記の通りです。

「四肢末端型」の冷えは、末梢血管の血行不良が原因と考えられます。生まれつきの体質、自律神経の乱れ、貧血などが関係しているケースも少なくありません。
ケアの方法としては、手足の先まで血行を良くするように意識することが大切です。不足している血液を補うことも、末端の血行不良の改善につながります。

冷えにもいろいろなタイプがあり、それぞれに適したケア方法があるとおわかりいただけたでしょうか?実際のところは、複数のタイプが組み合わさっていたり、他の要因が関係していたりするケースも少なくありません。その可能性も含めて自身の「冷え」を分析して、自分に合った改善方法を見つけてみてください。もちろん、漢方に詳しい医師や薬剤師といった専門家に相談してみるのもおすすめです。

忙しい中でも、自分の体と向き合う時間を少しでも確保して、体を内外から温めてみてください。つらい冷えを「体質だから、しかたない」と諦めず、和漢の知恵も上手に取り入れながら、ぽかぽかと温かい毎日を目指しましょう!