東洋医学の視点から考える
「心と身体のバランス」
整えるための食養生
2025/04/09
突然ですが、「中庸(ちゅうよう)」という言葉を聞いたことはありますか?
東洋医学においては「中庸」が基本方針のひとつだそうです。
中庸(ちゅうよう)とは?
「中庸」という言葉の意味は、「過不足なく調和が取れている」といった状態を指します。文献に初めて登場したのは『論語』のなか。孔子が「中庸の徳たるや、それ至れるかな」と賛嘆した言葉が記されているのです。
中庸は儒学の伝統的な中心概念として尊重され、儒教の経書である四書の1つは『中庸』という題名になっているほど。修得者が少ない高度な概念とも言われていますが、今回はそこまで難しい話をするつもりはありません。バランスを整えるための「食養生」についてわかりやすく解説します。
「病気は気から」はあながち間違いではない
東洋医学では心のバランスも体のバランスのひとつだと考えています。怒りっぽい、イライラしやすい、くよくよしがち......といった精神的な状態が内臓の健康にも影響を与えている可能性があるということ。「病は気から」と言いますが、まさに東洋医学では気持ちと体は連動していると考えられているのです。
心と体が連動しているという考え方は、「健康」という状態について考えるとわかりやすいかもしれません。本当に健康である状態というのは、体のバランスが整っているだけでなく、心のバランスも整っている状態を指すのではないでしょうか。そして、バランスが取れている状態を「中庸」と呼ぶのです。
冷たくないし熱くもない、不足していないし過剰でもない、そんな状態が中庸です。そして、東洋医学はその状態を目指していきます。
治療においても、病気を治すというより、その人にとっての中庸を目指していきます。ちょうどいいバランスになるようにケアしていくのが東洋医学なのです。
同じ人でも状態によって、今日食べるべきものは変わる
さらに、食事でバランスを整えるのが「食養生」という考え方です。 バランスを整えるのが目的なので、人によって食べるべきものは変わります。さらに、同じ人でも状態によって食べるべきものが変わります。つまり、今日と明日で食べるべきもの、避けるべきものが変わるのです。
原則はシンプルで、暑いときは冷まし、寒いときは温めるようにします。さらに、気温などの状況だけでなく、体質も考慮しなければなりません。例えば、冷え性なら温めるべきです。
気温や体温などの状況に加え、体質まで考慮して、何が足りないか何が余っているのかを見極めることが大切となります。
ただし、食事でバランスを整えるという考え方は、すでに実体験の中で理解しているのではないでしょうか。寒いと感じたら温かいものを食べ、暑いと感じたら冷たいものを食べるケースは珍しくないはずです。
バランスを整えるために必要なものを日頃から食べるようにしていけば、体の状態は自ずと中庸に近づいていきます。足りないものを補い、あり余っているものを取り除くように意識してみてください。
こうして説明すると、あえて意識するまでもなく、食事でバランスを取るのは当たり前のことのように思えるかもしれません。しかし、間違っているケースも決して珍しくありません。
1つの食材を食べ続ければよいわけではない
例えば、冷たいアサイースムージーを毎朝たっぷり飲んでいる女性もいます。健康のために良かれと思って栄養が豊富なフルーツを飲んでいるのですが、冷たいものを飲んでいるのですから体が冷えてしまっても当然の結果です。冷たいものを取り続けることで、体が慢性的に冷えている状態になっているかもしれません。
冷え性になるような体の状態や、冷え性になるような環境を継続してしまうと、どんどん悪化してしまいますので、注意しましょう。
このように、健康になるためと思って継続している食事が、実は状況や体質に合っていないというケースも珍しくありません。バランスを意識して、自分で気づいて改善することが大切です。
そもそも状況や体質によって必要な食事や栄養素は変わるので、全員に当てはまるようなオールマイティな食事は存在しません。これも大事なポイントです。
いくらスーパーフードだからといって、その1品さえ食べておけば健康になるというのは、東洋医学では間違った考え方。1つの食材を食べ続ければ健康になれるという単純な話ではないのです。
多様な食品を日常的に摂り、バランスを整えて中庸に
1つの食材に頼るのではなく、食事自体のバランスも整え、いろいろな栄養素を取れるようにしたほうが健康になりやすいのは誰でも想像しやすいでしょう。そうは言っても、多様な食品を日常的に摂取するのは難しいというイメージがあるかもしれません。しかし、簡単な方法はいくつかあります。
例えば、「スープ」ならそう難しくはありません。無理なく一度に多くの具材が食べられるのに加え、汁まで飲めば食材の栄養素を余すことなく取り入れられます。
食品の栄養素を無駄にしないという点では蒸し料理も優れていますが、スープのほうがより多様な食材や調味料を摂取しやすいという点で勝っています。
とくに温かいスープは、寒い日に体を温めるのに適しています。
スープを活用する食養生によって食事や栄養のバランスを整え、中庸を目指してみてはいかがでしょうか?